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申請の基礎

補助金の賃上げ要件とは:未達のときの返還の決まりを、新事業進出ものづくり・省力化・デジタル化AI・持続化で比べる

国の主な補助金には、1人当たり給与支給総額や事業場内最低賃金を引き上げる「賃上げ要件」がついています。新事業進出・ものづくり補助金(第1回)、省力化投資補助金〈一般型〉(第8回)、デジタル化・AI導入補助金〈通常枠〉、持続化補助金(第20回)の賃上げ要件の水準・達成を確かめる時期・未達のときの扱い(返還か、全体が不交付か)を公募要領から比べ、返還額の計算例を示します。

更新公式ページの確認日 2026年10月1日補助金ちず 編集部

賃上げ要件未達なら返還か全体が不交付補助金ちず
写真: maks_d(Unsplash)

国の主な補助金には、補助を受ける条件として賃上げの目標を立て、達成することを求めるものがあります。目標は主に2つで、1人当たり給与支給総額の年平均成長率と、事業場内最低賃金(事業場で最も低い賃金)の水準です。

達成できなかったときの扱いは制度ごとに大きく違います。事業を終えてから数年間の実績で確かめ、受け取った補助金を返還する制度と、実績報告の時点で確かめ、満たさなければ補助金全体が交付されない制度があります。

未達が分かる時期と扱い

返還する型(新事業進出・ものづくり、省力化、デジタル化・AI)

  1. 1交付決定
  2. 2補助事業の実施
  3. 3入金
  4. 4事業計画期間の報告
  5. 5未達なら返還

交付されない型(持続化の特例・加点)

  1. 1交付決定
  2. 2補助事業の実施
  3. 3実績報告で確認
  4. 4未達なら全体が不交付

4つの制度の賃上げ要件

新事業進出・ものづくり(第1回) 省力化〈一般型〉(第8回) デジタル化・AI〈通常枠〉 持続化(第20回)
誰にかかるか 全申請者(基本要件) 全申請者(基本要件) 150万円以上を申請する者。IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた者は150万円未満でも 賃金引上げ特例・賃金引上げ加点を選んだ者
給与の目標 1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上 3.5%以上 3%以上(IT導入補助金2022〜2025の交付決定者は3.5%以上) 特例:3.0%以上/加点:2.0%以上
最低賃金の目標 毎年、地域別最低賃金より30円以上高い 毎年、都道府県の最低賃金+30円以上 地域別最低賃金+30円以上(150万円以上の申請) 比較期間に地域別最低賃金以上(特例)
期間 補助事業終了後3〜5年の事業計画期間 3〜5年の事業計画期間 交付申請時点の翌事業年度以降3年間 2027年4月〜2028年3月の12か月を前年同月の12か月と比べる
従業員への表明 交付申請時までに必要 交付申請時までに必要(表明書を提出) 交付申請時点で必要 採択後、交付決定までに必要
大幅な賃上げの特例 給与+6.0%・最低賃金+50円で上限を引上げ 給与+6.0%・最低賃金+50円で上限を引上げ ― 上限に150万円上乗せ(給与3.0%)

デジタル化・AI導入補助金では、医療・介護・社会福祉・学校などの事業者は賃上げ要件の対象外です。省力化投資補助金では、最低賃金引上げ特例を受ける事業者には最低賃金の目標(+30円)がかかりません。

未達のときの扱い

新事業進出・ものづくり 省力化〈一般型〉 デジタル化・AI〈通常枠〉 持続化
給与の目標が未達 補助金交付額 ×(1 − 実績の年平均成長率 ÷ 目標値)を返還。ゼロ以下なら全額 (交付額 − 上限引上げ額)×(1 − 達成率)を返還。ゼロ以下なら全額 補助金の全部の返還を求める場合がある 補助金は交付されない(特例の上乗せ分だけでなく全体)
最低賃金の目標が未達 未達の年ごとに、補助金交付額 ÷ 事業計画期間の年数を返還 未達の年ごとに、補助金額 ÷ 事業計画年数を返還 補助金額 ÷ 3年 × 未達の年以降の年数を返還(1年度目で未達なら全額) ―
目標を表明していなかった 交付決定取消・全額返還 記載は見当たらない 交付決定取消 ―
特例の目標が未達 引上げ分の全額を返還し、基本要件分も未達成率に応じて返還 上限引上げ額を返還し、基本要件分も返還 ― 全体が不交付
返還を求めない場合 付加価値額が増加せず企業全体で事業計画期間の過半数が営業利益赤字、天災など 同左。再生事業者は返還要件を免除 給与:付加価値額が増えず3年の過半数が営業利益赤字、天災など/最低賃金:付加価値額の年平均成長率が1.5%に届かない、天災など 記載は見当たらない
返還額の上限・加算金 交付された補助金額が上限 記載は見当たらない 交付額が上限。加算金・延滞金は含まない ―

「記載は見当たらない」は、当サイトがその公募要領で該当する記載を見つけられなかったことを示します。

持続化補助金だけが「返還」ではなく「交付されない」形になっているのは、比べる12か月の終わりが補助事業実施期限日(2028年3月31日)で、実績報告の時点で達成を確かめるしくみだからです。公募要領は、実績報告までに従業員が退職するなどして年平均上昇率を算出できなくなった場合も、補助金は交付されないとしています。

返還額の計算例

公募要領の算式で、当サイトが計算します。

新事業進出・ものづくり補助金:給与の目標が未達

補助金交付額3,000万円、給与の目標値を年平均3.5%としたが、事業計画期間の最終年度の実績が年平均2.1%だった場合。

  • 返還額 = 3,000万円 ×(1 − 2.1 ÷ 3.5)= 3,000万円 × 0.4 = 1,200万円
  • 実績がゼロ以下なら3,000万円の全額。

新事業進出・ものづくり補助金:最低賃金の目標が1年だけ未達

同じく交付額3,000万円、事業計画期間5年のうち1年だけ、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円に届かなかった場合。

  • 返還額 = 3,000万円 ÷ 5年 = 600万円(未達の年ごと)

デジタル化・AI導入補助金:最低賃金の目標が未達(公募要領の例)

公募要領は、補助金交付額450万円の例で、最低賃金の目標が1年度目で未達なら450万円(全額)、2年度目で未達なら300万円(2/3)、3年度目で未達なら150万円(1/3)の返還としています。未達で返還した後の年度については、効果報告と返還は求めません。

賃上げの目標は審査と加点にもかかわる

  • 審査:新事業進出・ものづくり補助金と省力化投資補助金〈一般型〉は、補助事業の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も評価し、1人当たり給与支給総額の年平均成長率が物価上昇率を上回る程度に達しない計画は審査上大幅に不利になるとしています(事業計画書と審査項目)。
  • 加点と減点:賃上げの加点を受けて採択されたのに達成できなかった場合は、未達が報告されてから18か月の間、補助金の申請で大幅に減点されます(加点項目)。
  • 給与支給総額の範囲:新事業進出・ものづくり補助金では、給料・賃金・賞与等を含み、役員報酬・福利厚生費・法定福利費・退職金は除きます。全月分の給与を受けていない従業員(中途採用・退職など)は、その事業年度の計算から除きます。

返還と、ほかの返還との違い

賃上げ要件の未達による返還は、補助金を他の用途に使うなどの違反による交付決定の取消・返還とは別の決まりです。取消に伴う返還では、補助金適正化法により年10.95%の加算金がかかります(返還・取消・加算金)。デジタル化・AI導入補助金〈通常枠〉は、賃上げ未達の返還には加算金・延滞金を含まないと明記しています。

各制度の概要は新事業進出・ものづくり補助金、省力化投資補助金、デジタル化・AI導入補助金2026、持続化補助金(第20回)のページにあります。最低賃金の引上げと設備投資を組み合わせる厚生労働省の助成金は業務改善助成金です。

出典

よくある質問

給与の目標を少しだけ下回ったら、全額返還ですか?

制度によって違います。新事業進出・ものづくり補助金は、補助金交付額に目標値の未達成率を掛けた額の返還で、年平均成長率がゼロ以下なら全額返還です。省力化投資補助金〈一般型〉も達成率に応じた返還です。デジタル化・AI導入補助金〈通常枠〉は、給与の目標が未達の場合は補助金の全部の返還を求める場合があるとしています。持続化補助金の賃金引上げ特例は、要件を満たさないと補助金全体が交付されません。

赤字の年があっても返還しなければなりませんか?

新事業進出・ものづくり補助金と省力化投資補助金〈一般型〉は、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、給与の目標未達による返還を求めないとしています。デジタル化・AI導入補助金〈通常枠〉にも同様の例外があります。

この記事の更新

  • 2026年10月1日初版。4制度の公募要領の賃上げ要件・返還の規定から作成。返還額の計算例は当サイトが公募要領の算式で計算

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