申請の基礎
事業承継・M&Aで使える補助金と支援:国の補助金・引継ぎ支援センター・事業承継税制・市町村の奨励金を並べる
事業承継やM&Aのときに使える公的な支援を、お金の出方で4つに分けて整理します。国の事業承継・M&A補助金(16次公募の申請受付は2026年10月2日〜11月6日17:00)、中小機構の事業承継・引継ぎ支援センター(親族内承継・第三者承継・後継者人材バンク)、国税庁の法人版事業承継税制(特例承継計画の提出は令和9年9月30日まで)、市町村の奨励金・補助(茅野市の10万円、いわき市の診療所の承継)の違いと、確かめる順番をまとめます。
事業承継やM&Aで使える公的な支援は、補助金(費用の一部を後から受け取る)、相談・マッチング(公的機関の支援)、税制(相続税・贈与税の納税猶予)、市町村の奨励金・補助に分かれます。受け取り方も時期も違うため、ひとつの制度だけを見て判断すると順番を誤ります。
この記事は、それぞれの入口を並べ、何を確かめればよいかを整理します。国の補助金の枠ごとの上限額や採択件数は事業承継・M&A補助金とは(16次公募)で詳しく扱っています。
事業承継の公的な支援の4つの入口
国の補助金
事業承継・M&A補助金(設備投資・専門家費用・統合・廃業費)
相談・マッチング
事業承継・引継ぎ支援センター(中小機構)
税制
法人版事業承継税制(国税庁・相続税と贈与税の納税猶予)
市町村
承継した代表者への奨励金、業種を絞った承継の補助
4つの入口を並べる
| 入口 | 実施 | 何が受けられるか | 時期・期限(2026年10月1日時点で確認) |
|---|---|---|---|
| 事業承継・M&A補助金 | 国(中小企業庁) | 承継後の設備投資、M&Aの専門家費用、統合の投資、廃業費の一部を補助 | 16次公募の申請受付は2026年10月2日〜11月6日17:00 |
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 中小企業基盤整備機構 | 親族内承継の計画策定の支援、第三者承継(相談から譲受企業の紹介・成約まで)、後継者人材バンク | 相談の期限の記載なし |
| 法人版事業承継税制 | 国税庁 | 認定を受けた非上場会社の株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予と免除 | 特例措置は令和9年12月31日までの相続等・贈与。特例承継計画の提出は令和9年9月30日まで |
| 市町村の奨励金・補助 | 市町村 | 市町村ごとに違う(例:承継した代表者に定額10万円、診療所の承継に経費の2/3) | 年度ごとの予算。予算枠に達すると終了するものがある |
国の補助金:事業承継・M&A補助金
16次公募には4つの枠があります(各枠の公募要領 Ver.1.0)。
| 枠 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 2/3(小規模事業者等)又は1/2以内 | 800万円(賃上げ要件を満たすと1,000万円。800万円を超える部分は1/2) |
| 専門家活用枠(買い手支援類型・売り手支援類型) | 買い手2/3以内、売り手1/2又は2/3以内 | 600万円(デューデリジェンスを行う場合は+200万円) |
| PMI推進枠 | 類型により1/2以内、2/3又は1/2以内 | PMI専門家活用類型150万円、事業統合投資類型800万円又は1,000万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 2/3以内(単独申請) | 300万円 |
ほかの枠と一緒に廃業費を申請する場合は、上限に300万円が加わる枠があります。専門家活用枠は、補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合の上限が300万円に変わります。
計算は「対象経費×補助率」と上限額の低い方です。たとえば小規模事業者が事業承継促進枠で対象経費900万円を計画すると、900万円×2/3=600万円で、上限800万円を下回るので600万円(当サイトの計算)。
相談・マッチング:事業承継・引継ぎ支援センター
中小企業基盤整備機構のサイトは、事業承継・引継ぎ支援センターを「事業の引継ぎを円滑にするため」の全国共通の公的サポートとして案内しています。支援は3つです。
| 支援 | 内容(機構のサイトの説明) |
|---|---|
| 親族内承継支援 | 親族や従業員にスムーズに承継できるよう、事業承継計画策定等を支援 |
| 第三者承継支援 | 後継者が不在の場合など、相談から譲受企業の紹介、成約まで、第三者への事業引継ぎを支援 |
| 後継者人材バンク | 創業を目指す起業家と、後継者不在の会社や個人事業主を引き合わせる |
機構は冊子「中小企業経営者のための事業承継対策」も公開しています。費用の有無や窓口の場所は、センターのサイトで確かめてください(当サイトはこのページで料金の記載を確認していません)。
税制:法人版事業承継税制
国税庁のタックスアンサー(No.4148)は、法人版事業承継税制を「後継者である相続人等が、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の認定を受けている非上場会社の株式等を相続または遺贈により取得した場合」に、相続税の納税を猶予し、後継者の死亡等で免除する制度と説明しています。特例措置と一般措置の2つがあります。
| 項目 | 特例措置 | 一般措置 |
|---|---|---|
| 事前の計画 | 特例承継計画の提出(平成30年4月1日〜令和9年9月30日) | 不要 |
| 適用期限 | 平成30年1月1日〜令和9年12月31日の相続等・贈与 | なし |
| 対象株数 | 全株式 | 総株式数の最大3分の2まで |
| 納税猶予割合 | 100% | 相続等80%、贈与100% |
| 承継パターン | 複数の株主から最大3人の後継者 | 複数の株主から1人の後継者 |
| 雇用確保要件 | 弾力化 | 承継後5年間、平均8割の雇用維持 |
特例措置は計画の提出期限(令和9年9月30日)と相続・贈与の期限(令和9年12月31日)の2つの期限があります。贈与税の納税猶予は国税庁のNo.4439で案内されています。税額への影響や適用の可否は個別の事情で変わるため、税務署や税理士に確かめてください。
市町村の奨励金・補助の例
市町村の制度は、対象の業種や承継の相手を絞っていることがあります。Jグランツに載っている2つの例を並べます(どちらもJグランツでの申請受付は「無」です。茅野市の申請先は市の商工課)。
| 項目 | 茅野市 特定創業者等支援奨励金(事業承継) | いわき市 診療所開設・承継支援補助金 |
|---|---|---|
| 対象 | 市内に本社があり対象業種を営む、代表者が65歳以上の中小企業者から、その年度に事業を承継した60歳未満の代表者 | 診療所の開設・承継 |
| 対象外 | 承継前の代表者の配偶者又は2親等以内の親族 | (Jグランツの概要に記載なし) |
| 業種 | 建設業、製造業、サービス業(他に分類されないもの)のうち廃棄物処理業・自動車整備業・機械等修理業 | 診療所 |
| 額 | 1対象者あたり10万円 | 補助対象経費の2/3以内。上限は分娩できる施設のある産婦人科・産科又は小児科で3,000万円、それ以外の診療科で2,000万円 |
| 申請の期限 | 要件を満たした日から30日以内か年度末の早い方。予算枠に達したら終了 | 市の募集要項で確認 |
茅野市の制度は親族間の承継を対象外にしている点が、国の補助金と違います。承継の形(親族内・従業員・第三者)によって使える制度が変わるので、市町村の要件を先に確かめてください。
確かめる順番
- 承継の形(親族内・従業員・第三者・M&A)と時期を決める。相談先として事業承継・引継ぎ支援センターがある。
- 株式を相続・贈与で引き継ぐなら、事業承継税制の特例承継計画の期限(令和9年9月30日)を確認する。
- 承継に伴う設備投資・専門家費用があれば、事業承継・M&A補助金の公募回と締切を確認する。補助金は交付決定の後の発注が原則です(交付決定の前に契約・発注すると)。
- 市町村の奨励金・補助を確認する。親族間の承継や業種の制限、承継からの申請期限(例:30日以内)に注意する。
ほかの補助金の加点にも事業承継が関わるものがあります(補助金の加点項目とは)。
出典
- 事業承継・M&A補助金 公式サイト(確認日 2026-10-01)
- 事業承継・M&A補助金 16次公募 公募要領(事業承継促進枠)(確認日 2026-10-01)
- 事業承継・M&A補助金 16次公募 公募要領(専門家活用枠)(確認日 2026-10-01)
- 事業承継・引継ぎ支援センター(中小企業基盤整備機構)(確認日 2026-10-01)
- No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)(国税庁)(確認日 2026-10-01)
- 茅野市特定創業者等支援奨励金(茅野市)(確認日 2026-10-01)
- Jグランツ 【長野県茅野市】特定創業者等支援奨励金(事業承継)(確認日 2026-10-01)
- Jグランツ いわき市診療所開設・承継支援補助金(確認日 2026-10-01)
よくある質問
事業承継税制の特例措置はいつまでですか?
国税庁は、特例措置を平成30年1月1日から令和9年12月31日までの10年間の制度としています。特例措置を使うには特例承継計画の提出が必要で、提出期間は平成30年4月1日から令和9年9月30日までです。税額への影響は個別の事情で変わるため、税務署や税理士に確かめてください。
親族に引き継ぐ場合でも、市町村の奨励金は使えますか?
制度によります。たとえば茅野市の特定創業者等支援奨励金(事業承継)は、事業承継前の代表者の配偶者又は2親等以内の親族に当たる人を対象外としています。要件は市町村ごとに違います。
この記事の更新
- 2026年10月1日初版。事業承継・M&A補助金16次公募、国税庁タックスアンサーNo.4148、茅野市・いわき市の制度で作成
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