申請の基礎
補助金の返還を求められるとき:交付決定の取消・返還命令・加算金(年10.95%)を補助金適正化法の条文で整理
補助金は原則として返済の必要がないお金ですが、交付決定の内容や条件に違反すると、交付決定が取り消され、受け取った補助金の返還を命じられます。取消(第17条)・返還(第18条)・加算金と延滞金(第19条、年10.95%)・財産の処分の制限(第22条)を補助金適正化法の条文で整理し、主な国の補助金の公募要領が挙げる返還の場面と、加算金の計算例を並べます。
補助金は、持続化補助金の公募要領の言葉を借りれば「原則として、融資のように返済の必要がありません」。ただし、交付決定の内容や条件に違反したり、要件を満たさなかったりすると、交付決定が取り消され、受け取った補助金の返還を命じられます。取消に伴う返還では、年10.95%の加算金がかかります。
国の補助金では、この仕組みが「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(補助金適正化法)に定められています。このページでは、条文を1つずつ引きながら、取消・返還・加算金の関係を整理します。
返還を命じられるまで
- 1違反や要件の未達が分かる
- 2交付決定の取消(全部または一部)
- 3期限を定めた返還命令
- 4受領の日からの加算金
- 5納期限を過ぎると延滞金
交付決定の取消は、補助金の額が確定し入金された後でも行われることがあります。
条文で見る4つのしくみ
| 条文 | 何を定めているか |
|---|---|
| 第17条(決定の取消) | 補助金を他の用途に使うなど、交付決定の内容・条件、法令や処分に違反したときは、交付決定の全部または一部を取り消すことができる。額の確定の後にも適用される(第3項) |
| 第18条(補助金等の返還) | 取り消した部分について、すでに交付されているときは、期限を定めて返還を命じなければならない(第1項)。確定した額を超えて交付されているときも同じ(第2項) |
| 第19条(加算金及び延滞金) | 第17条第1項などの処分に関して返還を命じられたときは、受領の日から納付の日までの日数に応じ、年10.95%の加算金。納期日までに納めないと、納期日の翌日から年10.95%の延滞金。やむを得ない事情があれば全部または一部を免除できる |
| 第22条(財産の処分の制限) | 補助事業で取得した財産などを、承認を受けないで、交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、または担保に供してはならない |
第17条:取消は「できる」、額の確定の後でも
第17条第1項は「補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる」と定めています。第3項により、この取消は「補助金等の額の確定があつた後においても適用がある」とされています。入金された後でも取り消されることがある、ということです。
第18条:返還は「命じなければならない」
取り消した部分についてすでに補助金が交付されていれば、期限を定めて返還を命じなければなりません(第1項)。取消の有無にかかわらず、確定した額を超えて補助金が交付されている場合も、超えた分の返還が命じられます(第2項)。
第19条:加算金と延滞金
加算金は、第17条第1項(またはこれに準ずる他の法律の規定)による処分に関して返還を命じられたときにかかります。期間は「補助金等の受領の日から納付の日まで」で、一部を納めた後の期間は納めた額を差し引いて計算します。補助金を2回以上に分けて受け取っていた場合は、返還を命じられた額は最後に受け取った日に受け取ったものとして、足りなければ順にさかのぼって計算します(同法施行令第10条)。
延滞金は、返還命令の納期日までに納めなかったときに、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じてかかります。
納めないとどうなるか
返還命令に応じないと、同じ種類の事業について交付すべき補助金の交付を一時停止したり、未納額と相殺したりすることができます(第20条)。返還を命じた補助金と加算金・延滞金は、国税滞納処分の例により徴収することができます(第21条)。
加算金の計算例
受け取った補助金300万円について、交付決定の全部が取り消され、受領の日からちょうど2年(730日)後に全額を納めた場合を、当サイトが年365日として概算します。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 返還する補助金 | ― | 300万円 |
| 加算金 | 300万円 × 10.95% × 730日 ÷ 365日 | 65万7,000円 |
| 合計 | ― | 365万7,000円 |
受け取った額の2割を超える加算金になります。うるう年の日数の数え方や端数の処理は、当サイトでは確かめていません。各事業の交付規程で具体的な取り扱いが定められています。
公募要領が挙げる返還の場面
持続化・新事業進出・ものづくり・省力化は事務局を通じて交付される補助金で、取消や返還は各事業の交付規程に基づいて行われます。公募要領には、次のような場面が書かれています。
| 場面 | 公募要領の記載 |
|---|---|
| 不正な行為 | 虚偽の申請による不正受給、取得財産の目的外利用などが判明した場合は、交付決定取消だけでなく、交付済みなら加算金を課した上で返還を求める(持続化・新事業進出・ものづくり) |
| 補助金で買った財産の無断処分 | 承認を得ずに処分すると、交付規程違反により補助金交付取消・返還命令(加算金付き)の対象(持続化)。承認を受けずに貸付けや転売をした場合は交付決定の取消(省力化) |
| 承認を受けた財産処分 | 残存簿価相当額または時価(譲渡額)の高い額により、補助金額を限度に納付(省力化)。残存簿価等から算出される金額を納付させることがある(持続化) |
| 効果報告の未提出・虚偽 | 返還を求めることがある(省力化) |
| 補助事業の辞退 | 交付規程に基づき補助金の全部または一部の返還が必要な場合があり、その場合は受領の日からの日数に応じて加算金、納付が遅れれば延滞金(デジタル化・AI) |
| 不注意による焼失・紛失 | 故意がなくても、善管注意義務違反として交付決定の取消や返還に至る場合がある(省力化) |
| 賃上げ要件の未達 | 目標の未達成率などに応じた返還(新事業進出・ものづくり、省力化、デジタル化・AI)。詳しくは賃上げ要件と未達の返還 |
財産の処分の決まりは処分制限期間とはで詳しく扱っています。
賃上げ未達の返還と加算金
デジタル化・AI導入補助金〈通常枠〉の公募要領は、賃金引上げ計画の目標を達成できなかった場合の返還について「返還額は補助金交付額を上限とし、加算金・延滞金は含まないものとする」と明記しています。同じ公募要領でも、補助事業を辞退して返還する場合は加算金がかかると書いており、返還の理由によって扱いが違います。
新事業進出・ものづくり補助金と省力化投資補助金〈一般型〉の公募要領では、賃上げ未達の返還に加算金がかかるかどうかの記載を当サイトは見つけられませんでした。新事業進出・ものづくり補助金の公募要領は、賃上げ未達の返還について「返還額は交付された補助金額を上限とします」と書いています。
刑罰
偽りその他不正の手段で補助金の交付を受けた者は、5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方に処せられます(第29条)。補助金を他の用途に使った者は、3年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその両方です(第30条)。
新事業進出・ものづくり補助金の公募要領(1.3版)はこの罰則を「5年以下の懲役」と書いていますが、2025年6月1日施行の改正後の条文では「拘禁刑」になっています。
返還を求められないために確かめること
- 交付決定の内容と条件(交付決定通知書に書かれた条件を含む)
- 取得した財産の処分制限期間と、処分するときの事前承認
- 効果報告・事業化状況報告の期限
- 賃上げなどの要件と、達成状況を確かめる時期
いずれも交付決定の後に続く約束です。実績報告と額の確定の段階で交付されない場合は実績報告と確定検査にまとめています。
関連
出典
- 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(e-Gov法令検索)(確認日 2026-10-01)
- 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(e-Gov法令検索)(確認日 2026-10-01)
- 小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉公募要領 第8版(第20回)(確認日 2026-10-01)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.3版 令和8年9月(確認日 2026-10-01)
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)(確認日 2026-10-01)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)(確認日 2026-10-01)
よくある質問
加算金はどれくらいかかりますか?
補助金適正化法第19条は、第17条第1項の交付決定の取消などに関して返還を命じられたときは、補助金の受領の日から納付の日までの日数に応じ、年10.95%の割合で計算した加算金を納付しなければならないと定めています。やむを得ない事情があるときは、全部または一部が免除されることがあります。
賃上げの目標を達成できずに返還するときも加算金がかかりますか?
デジタル化・AI導入補助金〈通常枠〉の公募要領は、賃金引上げ計画の未達による返還額は補助金交付額を上限とし、加算金・延滞金は含まないと明記しています。新事業進出・ものづくり補助金と省力化投資補助金〈一般型〉の公募要領では、賃上げ未達の返還に加算金がかかるかどうかの記載を当サイトは見つけられませんでした。
この記事の更新
- 2026年10月1日初版。補助金適正化法(2025年6月1日施行の版)と4制度の公募要領から作成。加算金の計算例は当サイトの概算
同じテーマの記事
- 申請の基礎NPO法人・一般社団法人が使える補助金:持続化補助金は一般社団法人が対象外、NPO法人は条件付き。国の4制度と雇用関係助成金、助成財団の探し方NPO法人(特定非営利活動法人)と一般社団法人が国の補助金を使えるかどうかは、制度ごとに公募要領の「対象者」で決まっています。持続化補助金は一般社団法人を対象外とし、NPO法人は収益事業を行い認定NPO法人でない場合に限って対象になり得ます。デジタル化・AI導入補助金は社団法人・NPO法人も中小企業等に含めます。省力化投資補助金(一般型)と新事業進出・ものづくり補助金は社団法人を対象外とし、NPO法人には経営力向上計画の認定など5つの要件を求めます。雇用関係助成金の「事業主」は法人格を問いません。民間の助成財団の探し方もまとめました。
- 申請の基礎パートナーシップ構築宣言とは:宣言企業は10万8,181社、登録から公開まで約10日、補助金の加点での扱いパートナーシップ構築宣言は、取引先との共存共栄と「振興基準」の遵守を、代表権のある者の名前で宣言してポータルサイトに公表するものです。登録企業数(2026年10月1日時点で10万8,181社)、登録の3つのステップと公開までの日数、2026年1月からの公表要領と掲載取りやめのルール、補助金の公募要領での扱い(新事業進出・ものづくり補助金の加点、省エネ補助金の評価項目など)をまとめます。
- 申請の基礎フリーランス・副業の人が使える補助金はある? 個人事業主として開業していること・確定申告の書類・従業員の要件を公募要領で確かめるフリーランスや会社員の副業で事業をしている人が国の補助金を使えるかは、「個人事業主として開業しているか」「確定申告書・納税証明書を出せるか」「従業員がいるか」で決まります。持続化補助金は開業前の人を対象外とし、デジタル化・AI導入補助金は確定申告書の控えと所得税の納税証明書を求め、新事業進出・ものづくりと省力化投資(一般型)は従業員0名を対象外とします。当サイトが確認した公募要領に、副業かどうかで対象を分ける記載は見当たりませんでした。フリーランス・事業者間取引適正化等法は補助金とは別の制度です。
- 申請の基礎事業再構築補助金の事後手続き:実績報告・事業化状況報告(5年間)・財産処分・収益納付と、報告しないと返還になる決まり事業再構築補助金は新しい公募を終えましたが、採択された事業者の手続きはまだ続いています。補助事業が終わった後の実績報告(30日以内か期間の末日の早い方)、年度末の翌年度から5年間の事業化状況報告、単価50万円以上の財産を売る・貸す・既存事業に使うときの財産処分、収益納付の計算式、賃上げ要件を満たせなかったときの返還を、事務局の公式ページと補助事業の手引き(第12〜13回向け 1.2版)から整理します。
- 申請の基礎事業化状況報告と収益納付とは:補助金をもらった後の報告の回数・期限と、「収益納付は求めません」の制度との違い(持続化・新事業進出ものづくり・ものづくり・省力化)補助金の入金で手続きは終わりません。新事業進出・ものづくり補助金は5年間で計6回の事業化状況報告、省力化投資補助金〈一般型〉は5年間の効果報告、持続化補助金は1年後の事業効果等状況報告が必要です。報告の回数・期限・出さなかったときの扱いと、補助事業で得た収益の一部を納める「収益納付」の記載を、制度ごとに表で比べます。
- 申請の基礎事業承継・M&Aで使える補助金と支援:国の補助金・引継ぎ支援センター・事業承継税制・市町村の奨励金を並べる事業承継やM&Aのときに使える公的な支援を、お金の出方で4つに分けて整理します。国の事業承継・M&A補助金(16次公募の申請受付は2026年10月2日〜11月6日17:00)、中小機構の事業承継・引継ぎ支援センター(親族内承継・第三者承継・後継者人材バンク)、国税庁の法人版事業承継税制(特例承継計画の提出は令和9年9月30日まで)、市町村の奨励金・補助(茅野市の10万円、いわき市の診療所の承継)の違いと、確かめる順番をまとめます。