申請の基礎
補助金の申請書の作成を人に頼むとき:2026年1月施行の改正行政書士法と、社労士法の決まり
報酬を受けて補助金の申請書類を作ることは、原則として行政書士の業務です。2026年1月1日施行の改正で、「いかなる名目によるかを問わず」と条文に明記されました。雇用関係の助成金の申請書類は社会保険労務士の業務です。頼む前に確かめたい点を、法律と総務省の通知から整理します。
補助金の申請書類は、分量が多く、事業計画を書く必要もあるため、人に頼みたくなることがあります。ただし、報酬を受けて官公署に出す書類を作ることは、法律で資格者の業務と決められています。依頼先を選ぶ前に、この線を知っておく必要があります。
この記事は法律と行政の通知の内容を整理したものです。個別の依頼が適法かどうかの判断は、当サイトではしていません。
行政書士法の決まり
書類の作成を報酬を受けて行えるのは
行政書士・行政書士法人
官公署に提出する書類(多くの補助金の申請書)
社会保険労務士・社会保険労務士法人
労働社会保険諸法令に基づく申請書(雇用関係の助成金など)
申請者は事業者本人
資格者に作成を頼んでも、申請者は自分。工事会社やコンサルタントが申請者になれない制度もある
行政書士法の第19条第1項(業務の制限)は、現在次のように定めています。
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。
第1条の3の業務は、「官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること」です。補助金の交付申請書は、官公署に提出する書類にあたります。
違反した場合は、1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金です(第21条の2)。法人の従業者が業務として違反した場合は、法人にも罰金刑が科されます(第23条の3)。
2026年1月1日の改正で何が変わったか
行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)は、2025年6月13日に公布され、2026年1月1日に施行されました。総務省自治行政局長の通知(総行行第281号)によると、第19条第1項に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が加わりました。
通知は、この改正の趣旨を次のように説明しています。
行政書士や行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、「手数料」や「コンサルタント料」等どのような名目であっても、対価を受領して、業として、官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示することにより、行政書士や行政書士法人でない者による違反行為の更なる抑制を図ろうとする趣旨によるものであること。
つまり、改正で新しく禁止されたのではなく、以前から違法だったことが条文に書き込まれた、という位置づけです。
雇用関係の助成金は社会保険労務士
厚生労働省の雇用関係の助成金などは、労働・社会保険に関する法令に基づく申請です。社会保険労務士法の第2条は、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成と提出手続の代行を社会保険労務士の業務としています。第27条は、社会保険労務士・社会保険労務士法人でない者が、他人の求めに応じ報酬を得て、これらの事務を業として行ってはならないと定めています。
| 補助金・助成金の種類 | 書類作成を報酬を受けて業として行える資格者 | 根拠 |
|---|---|---|
| 官公署に出す書類一般(多くの補助金の申請書) | 行政書士・行政書士法人 | 行政書士法 第1条の3・第19条 |
| 労働社会保険諸法令に基づく申請書等(雇用関係の助成金など) | 社会保険労務士・社会保険労務士法人 | 社会保険労務士法 第2条・第27条 |
どちらの法律にも「他の法律に別段の定めがある場合」などの例外があります。
制度の側の決まり:申請者は自分
資格者に書類の作成を頼む場合でも、申請者は事業者本人です。制度によっては、このことを明記しています。
- 福井県の企業の太陽光・蓄電池補助金のQ&Aは、「発注先の工事会社やコンサルタント等が代わりに補助金の申請者となることは認められません」とし、その場合は受付の対象外になるとしています。
- 古賀市の太陽光補助金は、「代理申請はできませんので、補助対象者が申請してください」としています。
Jグランツには、事業者が委任した相手が申請の作成を代わりに行う「代理申請」の機能があります(事業者クイックマニュアル)。ただし、機能があることと、誰に報酬を払って頼めるかは別の話です。報酬を受けて書類を作れるかどうかは、上の法律で決まります。
頼む前に確かめること
- 依頼先は、行政書士(雇用関係の助成金なら社会保険労務士)か
- 報酬の名目にかかわらず、書類の作成を含む依頼になっていないか
- 制度の要領やQ&Aに、代理申請や第三者の関与についての定めがあるか
- 申請者は自分自身で、内容を自分で確認して提出する形になっているか
資格者を探す場合は、日本行政書士会連合会や全国社会保険労務士会連合会の名簿・検索が使えます。
出典
- 行政書士法(昭和二十六年法律第四号、e-Gov法令検索)(確認日 2026-09-30)
- 行政書士法の一部を改正する法律の公布について(通知)総行行第281号(総務省自治行政局長、令和7年6月13日)(確認日 2026-09-30)
- 社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号、e-Gov法令検索)(確認日 2026-09-30)
- 企業の太陽光・蓄電池設備導入促進事業補助金 Q&A(福井県、令和8年度)(確認日 2026-09-30)
- 補助金申請システム(Jグランツ)事業者クイックマニュアル(2026/3/26版)(確認日 2026-09-30)
よくある質問
「コンサルタント料」という名目なら、行政書士でなくても申請書を作ってよいのですか?
総務省の通知は、行政書士や行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、「手数料」や「コンサルタント料」等どのような名目であっても、対価を受領して、業として官公署に提出する書類等を作成することは違法だという現行法の解釈を条文に明示した、と説明しています。
当サイトは申請を手伝ってくれますか?
当サイトは、制度の情報を公式資料から整理して載せていますが、申請書類の作成や申請の代行は行っていません。
この記事の更新
- 2026年9月30日初版
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