補助金ちず

申請の基礎

補助金の不正受給と罰則:補助金適正化法第29〜32条の刑罰、補助金ごとの取消・公表の決まりと、雇用関係助成金の「5年間不支給・2割加算・公表」

偽りその他不正の手段で補助金を受け取ると、補助金適正化法第29条で5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金(併科あり)の対象になり、法人にも罰金刑が科されます(第32条)。持続化・新事業進出ものづくり・省力化の公募要領が定める取消・返還・公表と、雇用関係助成金の共通要領が定める不正受給の扱い(返還額の2割の加算、5年間の不支給、公表)を並べ、会計検査院の指摘の例も紹介します。

更新公式ページの確認日 2026年10月1日補助金ちず 編集部

不正受給と罰則5年以下の拘禁刑助成金は5年不支給補助金ちず
写真: Kelly Sikkema(Unsplash)

偽りその他不正の手段で国の補助金を受け取ると、補助金適正化法第29条により5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方の対象になります。法人の代表者や従業員が業務に関して違反したときは、法人にも罰金刑が科されます(第32条)。

刑罰とは別に、補助金の側では交付決定の取消・加算金つきの返還・公表があり、厚生労働省の雇用関係助成金では返還額の2割の加算と5年間の不支給があります。

不正受給に対する3つの層

刑罰補助金適正化法の罰則(第29条〜第32条)
行政の処分交付決定の取消・返還命令・加算金
制度ごとの措置公表・以後の申請の制限・不支給期間

補助金適正化法の罰則(第29〜32条)

条 対象になる行為 刑
第29条第1項 偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた者 5年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又は併科
第29条第2項 情を知って交付した者 同上
第30条 第11条に違反して補助金等を他の用途に使用した者 3年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金、又は併科
第31条 遂行の一時停止命令に違反した者、法令に違反して成果の報告をしなかった者、第23条の報告をしない・虚偽の報告・検査の拒否・質問への不答弁や虚偽の答弁をした者 3万円以下の罰金
第32条 法人・人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が業務に関して第29〜31条の違反をしたとき 行為者のほか、法人・人にも各条の罰金刑

新事業進出・ものづくり補助金の公募要領(1.3版)は第29条の刑を「5年以下の懲役」と書いていますが、2025年6月1日施行の条文では「拘禁刑」です。

罰則のほかに、返還を命じられた補助金・加算金・延滞金を納めないときは、同種の補助金の交付の一時停止や相殺(第20条)、国税滞納処分の例による徴収(第21条)があります。取消・返還・加算金(年10.95%)のしくみは補助金の返還を求められるときで扱っています。

補助金ごとの決まり

制度 公募要領に書かれた処分 不正の例として挙げているもの
持続化(第20回) 交付決定の取消・返還命令(加算金の徴収を含む)、不正の内容の公表等。法令違反が明らかな場合は罰則のほか、採択取消、交付決定取消や交付済み補助金の全額返還(加算金付き)等 他の用途への無断流用、虚偽報告など
新事業進出・ものづくり(第1回) 交付決定取消。交付済みの場合は加算金を課したうえで返還。悪質な場合は事業者名、不正を行った時点の代表者名、不正内容を公表 虚偽の申請による不正受給、取得財産の目的外利用、自己負担額を減額又は無償とするような販売方法、補助金受給額を不当に釣り上げ関係者へ報酬を配賦する
省力化〈一般型〉(第8回) 補助金の交付取消・返還、不正の内容の公表等。補助事業実施期間中に他の補助金で同様の行為等をした場合も、交付決定取消・返還を行うことがある 他の用途への無断流用、虚偽報告など

新事業進出・ものづくり補助金は、「経済産業省又は中小機構が所管する補助金又は給付金等において不正を行った事業者」を補助対象外としています。

雇用関係助成金の不正受給(共通要領)

厚生労働省の雇用関係助成金は、支給要領の第1 共通要領(令和8年4月8日現在)で不正受給の扱いを決めています。

項目 共通要領の決まり
不正受給とは 偽りその他不正の行為により本来受けることのできない助成金の支給を受け、又は受けようとすること。故意によらない記載誤りは不正の行為に該当しない。役員・従業員・代理人など申請に関わった者の不正は、事業主の不正とみなす
請求される額 返還を求めた額+延滞金(不正受給の日の翌日から納付の日まで年3分。支給申請が令和2年3月31日以前なら年5分)+返還を求めた額の2割に相当する額
不支給措置 不支給とした日又は支給を取り消した日から5年間(平成31年3月31日以前の支給申請は3年間)、助成金を支給しない。不正に関与した役員等が役員となっている他の事業主にも同じ期間支給しない。請求金が全額納付されるまで期間を延長(時効が完成している場合を除く)
公表 支給決定取消額等の合計が100万円以上で、返還を命じた日から1か月以内に全額納付されないとき、又は特に重大・悪質なときは、事業主の名称、代表者と不正に関与した役員等の氏名、事業所の名称・所在地、助成金の名称、返還を命じた額、不正の内容などを公表
公表の期間 不支給決定又は支給決定取消を行った日から5年が経過する日まで(未納なら全額納付を確認した日まで)
社労士・代理人 不正受給に関与した社会保険労務士・代理人・訓練を行う者にも同じ額を請求し、氏名・事務所の名称などを公表

雇用関係助成金は申請の時点で、不正受給が発覚した際の事業主名等の公表や返還に承諾していることが支給の要件になっています(共通要領の不支給要件)。共通の要件は人を雇う・育てる助成金の全体像にまとめています。

計算例:100万円を不正に受給し、1年後に納付した場合

当サイトが共通要領の算式から概算します(延滞金は年3分で1年分として計算。日数の数え方や端数処理は含めていません)。

内訳 額
返還を求めた額 100万円
2割に相当する額 20万円
延滞金(100万円×年3%×1年) 3万円
合計(概算) 約123万円

2割に相当する額に延滞金が発生する場合は、その額も含まれます。さらに、不支給措置期間の5年間は、ほかの雇用関係助成金も受けられません。

会計検査院の指摘の例(令和6年度決算検査報告)

会計検査院は、中小企業基盤整備機構の補助金(事業再構築補助金、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)について、21の補助事業者等の事業で、機構の補助金3億8,199万5,762円を不当と認めました。このうち、ものづくり補助金の5件(3,738万2,667円)の内容は次のとおりです。

事態 事業主体 補助金
納品を受けていないのに受けたとし、実際に要した額を超える事業費を記載するなどした虚偽の実績報告書等を提出 2 1,766万1,110円
導入した機械装置を専ら他社に使用させ、事業計画書の事業を自ら実施していない 1 1,000万円
処分制限財産を無断で交付の目的に反して使用し、廃棄するなどしていた 2 972万1,557円

会計検査院は、中央会と155事業主体の172事業を対象に会計実地検査を行ってこれらを見つけています。補助金の支払い後にも検査が入ることは、各制度の公募要領も書いています(持続化補助金は「会計検査院や補助金事務局等が抜き打ちで実地検査に入ることがあります」)。

関連

出典

よくある質問

書類の書き間違いも不正受給になりますか?

雇用関係助成金の共通要領は、支給申請書に事実に反する記載があった場合でも、その記載誤りが故意によらないものと認められる場合は不正の行為には該当しないとしています。一方で、代表者のほか役員・従業員・代理人など申請に関わった者が偽りその他不正の行為をした場合は、事業主が不正の行為をしたものとみなします。

不正受給をすると、ほかの補助金も受けられなくなりますか?

新事業進出・ものづくり補助金(第1回)は「経済産業省又は中小機構が所管する補助金又は給付金等において不正を行った事業者」を補助対象外としています。雇用関係助成金は、不正受給をした事業主に、不支給とした日又は支給を取り消した日から5年間、助成金を支給しません。

この記事の更新

  • 2026年10月1日初版。補助金適正化法(2025年6月1日施行の条文)、3制度の公募要領、雇用関係助成金の共通要領(令和8年4月8日現在)、会計検査院の令和6年度決算検査報告から作成

同じテーマの記事