申請の基礎
診療所の開設・承継に使える補助金:重点医師偏在対策支援区域の承継・開業支援事業(千葉県・栃木県)と、事業承継・M&A補助金で医療法人が対象外であること
医師少数区域などで診療所(医科)を承継・開業する場合の「重点医師偏在対策支援区域における診療所の承継・開業支援事業」を、千葉県・栃木県のページから基準額・補助率・対象者で整理。施設整備・設備整備は1/2、地域への定着支援は2/3。あわせて、事業承継・M&A補助金(16次)の公募要領が医療法人を対象外とし、診療報酬との重複に注意を求めていることを原文で確かめました。
診療所(医科)の開設・承継で使える公的な支援として、国の予算で都道府県が行う「重点医師偏在対策支援区域における診療所の承継・開業支援事業」があります。必要な医師を確保できず、人口減少よりも医療機関の減少が速い地域などを「支援区域」とし、そこで診療所を承継・開業する場合に、施設整備・設備整備(補助率1/2)と、一定期間の地域への定着支援(補助率2/3)を補助します。
一方、中小企業向けの国の補助金の多くは、医療法人を対象外にしています。事業承継・M&A補助金(16次)の公募要領も、医療法人を「対象外となる中小企業者等」に挙げています。
承継・開業支援事業の流れ(千葉県の例)
- 1県の応募期間に事業計画書を提出
- 2県の医療対策部会・保険者協議会で協議
- 3厚生労働省の審査
- 4県の内示
- 5工事・医療機器の契約と整備
- 6実績報告と補助金の交付
施設整備・設備整備は、県からの内示の前に工事等の契約を結ぶと補助の対象外です(千葉県)。
承継・開業支援事業の基準額と補助率
千葉県と栃木県のページに載っている補助対象経費・基準額・補助率は同じです。
| 事業 | 補助対象経費 | 基準額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 施設整備事業 | 診療部門(診察室・処置室等)の整備。上限面積は無床診療所160㎡、有床診療所(5床まで)240㎡、(6床から)760㎡。医師住宅・看護師住宅を一体整備する場合は各80㎡を加算 | 1㎡当たり 鉄筋コンクリート484,000円/ブロック214,000円/木造355,000円 | 1/2 |
| 設備整備事業 | 診療所として必要な医療機器の購入費 | 1か所当たり16,500千円 | 1/2 |
| 地域への定着支援事業 | 職員の基本給・諸手当、光熱水料、借料、委託費など診療所の運営に必要な経費 | 1か所当たり 6,200千円+(71千円〜87千円×診療日数)。訪問看護は25千円×訪問日数を加算 | 2/3 |
定着支援の1日当たりの額は、診療日数1〜129日で71千円、130〜259日で77千円、260日以上で87千円です。
基準額×補助率(当サイトが計算):設備整備は16,500千円×1/2=825万円。年間250日診療する場合の定着支援は、基準額6,200千円+77千円×250日=25,450千円で、その2/3は約1,697万円です。実際の補助額の算定方法(実際に支出した額との比べ方など)は、各県の交付要綱で確かめる必要があります。
千葉県と栃木県の違い
| 項目 | 千葉県 | 栃木県 |
|---|---|---|
| 支援区域 | 山武長生夷隅医療圏、君津医療圏(いずれも医師少数区域) | 県北医療圏、県西医療圏 |
| 対象者 | 支援区域で診療所(医科)を承継・開業する予定の方 | 令和6年12月17日から令和9年3月31日までに承継または開業を行った・予定している、保険診療を主とする医科診療所 |
| 募集 | 令和8年度の応募受付は令和8年2月26日17時まで | 活用意向調査(提出期限 令和7年8月22日)は募集終了 |
| 注意 | 事業計画(診療所名、所在医療圏等)は公開される | 有床診療所の開設は医療審議会・地域医療構想調整会議での協議が必要 |
どちらも、応募した診療所のうち県の地域医療対策協議会(医療対策部会)と保険者協議会で支援対象として合意を得たものが対象になり、別に厚生労働省の審査があります。栃木県は、実施計画書を出しても必ずしも補助対象になるとは限らないとしています。支援区域はほかの都道府県でも設定されていますが、区域と募集の時期は都道府県ごとに違います。
へき地の診療所や、市町村が独自に行う開業支援の補助は、この記事では確認していません。
国の中小企業向け補助金での医療機関の扱い
| 補助金 | 医療法人・医師の扱い(公募要領) |
|---|---|
| 事業承継・M&A補助金(16次・事業承継促進枠) | 医療法人・社会福祉法人・一般社団法人などは「対象外となる中小企業者等」。個人事業主は青色申告者であることが条件 |
| 小規模事業者持続化補助金(第20回) | 「医師、歯科医師、助産師」「医療法人」は補助対象にならない者 |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回) | 医療法人は補助対象外 |
| デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠) | 医療法人・社会福祉法人は常時使用する従業員300人以下で対象の定義に含まれる(小規模事業者には該当しない) |
診療報酬との重複:事業承継・M&A補助金の公募要領は、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬などと重複がある場合、補助対象の設備等が報酬事業とは別の事業で使われることが明確に確認できないと採択されないとしています。重複に当たらない根拠の例として「指定保険医療機関・保険薬局等に該当しないことを明示する」「従来の報酬事業等を営む事業所とは別の事業所で、設備機器等を完全に分離して実施する」を挙げています。持続化補助金も、保険診療の報酬が適用されるサービスと同一・類似の事業を補助対象外としています。
関連
出典
- 重点医師偏在対策支援区域における診療所の承継・開業支援事業について(千葉県)(確認日 2026-10-01)
- 栃木県重点医師偏在対策支援区域診療所承継・開業支援事業費補助金について(栃木県)(確認日 2026-10-01)
- 事業承継・M&A補助金 16次公募 公募要領(事業承継促進枠)(確認日 2026-10-01)
- 小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉公募要領 第8版(第20回)(確認日 2026-10-01)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)(確認日 2026-10-01)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)(確認日 2026-10-01)
よくある質問
どこで開業しても承継・開業支援事業の対象になりますか?
対象は、都道府県が設定した「重点医師偏在対策支援区域」で診療所を承継・開業する場合です。千葉県は山武長生夷隅医療圏と君津医療圏、栃木県は県北医療圏と県西医療圏を対象にしています。県の協議会で支援対象として合意を得る必要があり、厚生労働省による審査もあります。
医療法人は事業承継・M&A補助金を使えますか?
16次公募の公募要領(事業承継促進枠)は「対象外となる中小企業者等」に社会福祉法人・医療法人・一般社団法人などを挙げています。また、公的医療保険からの診療報酬と重複がある場合の扱いにも注意を求めています。
この記事の更新
- 2026年10月1日初版。千葉県・栃木県のページと各公募要領(2026年10月1日確認)で作成
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